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PFC-FD™療法


PFC-FD™療法で改善が期待できる疾患
PFC-FD™の注入によって改善効果が期待できる疾患は大まかに下記のようになっています。
部 位 疾 患 名
膝関節 変形性関節症、靭帯損傷など
足関節・足部 変形性関節症、腱付着部症、靭帯損傷など
股関節 変形性関節症
肩関節 変形性関節症、腱板損傷など
肘関節 腱付着部炎、靭帯損傷など
現在もっとも活用されている疾患は膝に生じる変形性膝関節症です。ですが靭帯損傷や腱炎といった他の運動器疾患でも
効果が期待されており、スポーツ選手を中心に様々な治療に活用され始めています。
PFC-FD™療法とは?
血小板の働きを利用した関節治療
PFC-FD™とは、血小板の力を活用する治療法であり、血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものの商品名・サービス名となります。PFC-FD™はPlatelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryという造語の頭文字から名付けられています。血小板が傷を治す際に放出する”成長因子”の働きを活用し、人体がもともと持っている「治癒力」を高める新しい治療法です。自己組織を活用する薬物や外科的方法によらないバイオセラピーです。プロゴルファーのタイガー・ウッズ選手や、メジャーリーガーの大谷翔平選手が怪我の改善に活用したことで話題になった「PRP(多血小板血漿)療法」がありますが、PFC-FD™療法はそのPRP療法を応用した技術になります。現在ではPRP同様に関節症や、関節周囲の靭帯や軟部組織の治療に活用が始まっています。

PRPとPFC-FD™の違い
PRPは自己血液を遠心分離して得られる血小板が多量に含まれた液体(多血小板血漿)のことですが、PFC-FD™は自己血液からこのPRPを作成し、そこから成長因子を取り出して凍結乾燥(フリーズドライ)したものです。このPFC-FD™に含まれる成長因子が体内(患部)で組織治癒や炎症抑制に寄与することが期待されています。

PFC-FD™療法に期待される効果
症状の改善
関節内で炎症を起こしているような場合、PFC-FD™を関節内に注入(注射)することで、炎症を抑え痛みや腫れといった症状の緩和が期待できます。その効果は個人差があるものの一定期間続き、概ね3ヶ月から半年ほどと見られています(*1)この持続力を活かし、症状が抑えられている間に運動療法を行い患部周辺の筋肉を鍛えることで関節への負荷を減らすことができるため、QOL(生活の質)の改善へとつながります。また、痛みが軽減することで運動がしやすくなり体重低下に成功すれば、さらに膝関節にかかるストレスが軽減する、という好循環を獲得できる可能性もあります。

PFC-FD™療法のメリット
①安全性が高い
患者様ご自身の血液をもとに製造されるため、他人の組織を使うような治療や薬物による治療と比べると、拒否反応や感染症リスク、その他の副作用が少ない治療と言えます。もちろん注射特有の痛みはあります。また、稀に一週間程度の腫れが残ってしまう場合もありますが、速やかに日常生活に戻れることがほとんどです。

②施術が簡便
PFC-FD™療法の施術は標準的には医療機関へ2回訪れることで完了します。手術や入院といった負担がなく、注射を受けた日に歩いて帰ることも可能です。施術後の診療は、1週、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に行います。ただし、PFC-FD™療法はその抗炎症作用で痛みが引いている間に運動療法を取り入れることで効果を最大化できるため、関節によっては施術後に運動療法の指導を受けるための通院が推奨されています。

PFC-FD™療法のデメリット
①自由診療のため治療費は自己負担
PFC-FD™療法は新しい治療であり、公的保険適用ができない「自由診療」という枠組みのなかで行われています。保険診療の場合、治療を受ける方の支払う費用は治療費の一部で済むのに対し、自由診療では全額自己負担となります。

②効果にばらつきがある
PFC-FD™療法は個人の血小板に含まれる成長因子の働きを活用した治療です。そのため、一般的な薬と違い効果にばらつきがあります。個人の血小板やそれに含まれる成長因子の働きによって効果が変わるので、あまり働きが強くない方の場合には効果が薄かったり、逆に働きが強い方の場合は思ったよりも効果が出ると言ったことが想定される治療になります。

③未発見のリスク
ご自身の血液を利用した治療法のため、拒否反応やアレルギーリスクは非常に少ないと考えられ、深刻な有害事象は報告されていません。とはいえ、新しい治療ということもあり臨床データがまだ少なく、今後新たなリスクが発見される可能性がないわけではありません。

PFC-FD™療法を受ける流れ
PFC-FD™療法の流れをご説明いたします。加工の過程は厚生労働省の認可を受けた細胞加工センターでの製造工程を掲載しています。このうち、患者様が医療機関へお越しいただく必要があるのは「①採血」と「⑥患部へ注入」になっています。

① 採血
PFC-FD™療法を提供している医療機関で採血を受けます。患者様から約50mlの血液を採取し、厚生労働省認可の細胞加工センターに送られます。患者様に特別な準備は基本的に必要ありませんが、ヒアルロン酸注射や痛み止めの注射を関節に行っている方は、PFC-FD™がきちんと関節内に浸透するよう、前後1ヶ月は中止が必要です。

② 抽出(PRPの作製)
細胞加工センターに届けられた血液を、遠心分離機にかけ、PRP(多血小板血漿)を作製します。

③ 活性化
塩化カルシウムを加えることによりPRP内の血小板が持つ成長因子を活性化させます。ただし活性化時には、血小板の働きの一つであるカサブタを作る働きも活性化するため、PRPが凝結しはじめる”ゲル化”を引き起こして注射ができなくならないよう、凝固阻害成分も投与しながら活性化を行います。この工程によってPRPから、血小板のもつ成長因子を活性化した液体「PFC」が完成します。

④ セルフリー加工
「セルフリー加工」とは「無細胞加工」と訳され、作製されたPFCに残った細胞を専用のフィルターを使用して濾過することにより除去します。なるべく成長因子が直接患部に届くようにこの処理が行われます。

⑤ フリーズドライ
無細胞加工が施されたPFCを凍結乾燥します。凍結乾燥することにより長期保存(約6か月間)と輸送の簡便化が実現できます。また、成長因子成分の含有量やその働きに対してこの凍結乾燥技術による影響はなく、生理食塩水で溶くことで元の状態へと戻すことができます。フリーズドライ後のPFCが「PFC-FD™」と呼ばれる状態です。これで「PFC-FD™」の完成です。

⑥ 患部へ注入
採血からおよそ3週間後、医療機関にて患者様が来院するタイミングに合わせて凍結乾燥された「PFC-FD™」を生理食塩水で液体に戻します。液体に戻した「PFC-FD™」を患者様の患部へ注射することでPFC-FD™療法は完了となります。

PFC-FD™療法

※脚注

*1…Regenerative Therapy11 (2019)5-7 「Can intra-articular injection of freeze-dried platelet-derived factor concentrate regenerate articular cartilage in the knee joint?」 Tomohiko Shirata,Yuki Kato

※PFC-FD™は、セルソース株式会社の提供する商標です