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頚動脈狭窄症


疾患症状について

放置すると 脳梗塞 になる怖い病気

 脳に血流を運ぶ主な血管には、左右の内頚動脈、左右の椎骨動脈の計4本があります。このうちの特に重要な内頚動脈は、首を通過する部位で血管の壁にプラークという沈着物が溜まり分厚くなった結果、血流の通り道が細くなることがあります。
 このプラークは固いものから柔らかいものまでさまざまで、柔らかいプラークが脳に飛んで脳梗塞の原因となることがあります。あるいは、血流の通り道が細くなった結果、脳への血流が足りなくなって脳梗塞になる場合や、一時的に脳梗塞の症状が出たりします。その症状は脳梗塞の部位によってさまざまですが、半身に力が入らなくなる、しびれる、ふらつく、ろれつが回らない、言葉がでにくい、などが代表的です。


プラークとは

 プラークとは、血管の壁にコレステロールやカルシウム、脂肪などの物質が沈着してできる塊のことで、動脈硬化の直接的な原因です。
 プラークは血管の内壁にこぶのように盛り上がり、血管を狭くして血液の流れを妨げます。


発見のタイミング

 脳ドックやかかりつけのクリニックなどで、頚動脈超音波検査や頭頸部MRI/Aを受けられた方で、頚動脈狭窄症を指摘されることがあります。
 また、脳梗塞を発症された方が原因を精査する際に発見されることもあります。


脳梗塞になる可能性

 脳卒中のうち75%を占めるのが脳梗塞です。その原因の一つである頚動脈狭窄症は果たしてどれくらいの割合で脳梗塞になるのでしょうか。海外の研究によれば、無症状(脳梗塞になったことがない)で60%以上の狭窄の方だと、薬物治療をおこなっていても5年間で血管が細い側の脳梗塞発生率は11%といわれています。
 また、頚動脈狭窄症が原因で脳梗塞になった方は、50%以上の狭窄がある場合、2~5年間で22.2~26.5%も脳梗塞を再発すると言われています。


どんな治療が必要か

 頚動脈狭窄症は、狭窄率や年齢・身体状態・他に治療中の病気などにより治療方法が異なります。極軽度であればまずは生活習慣の見直しを行います。中等度以上の狭窄があれば、生活習慣の見直しと抗血小板薬の内服が適切です。
 脳梗塞の既往がある方、高度狭窄の方では外科治療をお勧めしています。



検査・診断

プラークの形状や柔らかさ、血流速度などをチェック


 造影剤や放射線を使わないMRIを用いた血管検査であるMRAや、同じく造影剤や放射線を使わない超音波(エコー)検査にて狭窄があるかを評価します。 またMRIを用いて狭窄の原因となっているプラークがどれくらい脆弱で危険なものなのかも評価します。 内頚動脈が細くなった結果、脳の血流が足りなくなっている恐れがある患者さんには、脳血流の検査やカテーテルを用いた血管撮影を行う場合があります。



MRI検査(MRA)

 まずは、古い脳梗塞や隠れ脳梗塞をチェックします。 脳卒中を疑う患者さんはほとんどこの検査を受けていただきます。 外来で行え、針を使用しないので痛みはなく、検査時間は30~40分です。 血管をうつすMRAという検査を行い、血管に狭窄がないかをチェックします。

 ただし、体内に金属がある方や入れ歯・補聴器・入れ墨などがある場合は、機器の破損、やけどなどの可能性があり、閉所恐怖症がある方は検査に耐えられない可能性があるため、スタッフへお申し付けください。 もちろん、当院スタッフからあらかじめ確認させていただきます。


頚動脈超音波検査

 痛みも苦しさもない検査です。 暗いお部屋で横になり、首にゼリーを付けて測定用の機械を当てます。検査時間は30分程度で、外来で行うことが可能です。 左右の首に当てて、血管の走行、血管の分岐の位置、血管内のプラークや内膜肥厚の確認、血流の確認を行うことが可能です。


CT検査(CTA)

 CTAでは、骨と血管の位置関係や血管に付着している石灰化、狭窄している血管の通り道(内腔:ないくう)が分かります。
 造影剤を使用したCT検査であるCTAで血管の撮影を行います。 造影剤は腕の静脈に針を刺して投与するので、チクッとした痛みがあります。 また、造影剤を投与した際に体のほてりを感じる場合がありますが、多くは1分以内にほてりは解消されます。 外来で行え、15~20分以内で終わります。ただし、腎臓が悪い方や喘息をお持ちの方はお体の状態が悪くなる可能性があるため、診察の際にお申し付けください。 もちろん、当院スタッフからあらかじめ確認させていただきます。


脳血管撮影(DSA)

 精査の結果、頸動脈ステント留置術(CAS)が必要と判断された場合、術前にカテーテルを用いた脳血管撮影(血管造影検査:DSA)を行います。

 この検査は入院で行うことがほとんどです。 多くの場合は2泊3日、手から検査の場合は1泊2日です。 万が一、治療中に血管が閉塞しても他の血管から血流が入ってくるのかを確認したり、治療で使用するステントのサイズや脳梗塞を予防するためのプロテクションデバイスを選択すため、詳細な血管の形状を確認します。

 麻酔を行い動脈に針を刺しますが、最初の局所麻酔さえ終われば、痛みを感じない人がほとんどです。 造影剤使用時のほてりがあります。 その他に目がちかちかやめまい、苦みを感じる場合もあります。

 つらい場合はお近くのスタッフへ頭を動かさず、声でお申し付けください。



治療法

3 つの選択肢があります

 脳梗塞症状のない内頚動脈狭窄の場合は、内服薬を調整して手術なしに経過観察をすることが多いです。 一度脳梗塞を起こした場合は、狭窄の原因のプラークの状態や狭窄度合いに応じて手術をお勧めします。 手術には、カテーテルを用いたステント留置術と、頚動脈を直接処理する内膜剥離術があります。


経過観察・内服治療

 狭窄率が60%未満の方は、生活習慣の見直しとともに場合によっては内服薬(抗血小板薬)を服用していただきます。 また、高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病をお持ちの方は、生活習慣が改善されるまでの間、お薬での治療(降圧薬など)を併用していただくことが多いです。


頸動脈ステント留置術

 ステント留置術の場合は、手首や鼡径部からカテーテルを挿入し、風船のような道具を用いて狭窄部を広げ、ステントという網目状の筒を狭窄部に展開して固定します。 近年はカテーテルの道具の進歩により安全に良好な成績が得られるようになりましたが、抗血小板薬を一定期間服用する必要があります。 血管が細くなっている原因のプラークがあまり脆弱ではなく、細くなっているところを広げるだけで良い場合はこちらをお勧めすることが多いです。


頚動脈内膜剥離術

 内膜剥離術を行う場合、頚部の皮膚を切るというのが最大のデメリットになりますが、当院では頚部の筋肉にそって8-10cm程度の皮膚切開をして、抜糸のいらない技術を用いて綺麗に皮膚を閉じることで整容面でも目立たない手術が可能です。 内膜剥離術を行うと、原因となっているプラークそのものを完全に摘出できるため再発のリスクや術中に沈着物が脳に飛んで脳梗塞になるリスクは低くなります。 また、狭窄部が耳の下、顎の骨の裏側にあり手術が難しい(高位病変)と言われる患者さんもいますが、当院では問題なく手術が可能です。 プラークの性状によっては、脆弱すぎてステントで押さえつけるだけでは脳梗塞や再発のリスクがあるため、こちらをお勧めする場合があります。


治療の相談について

 治療を受けられる方の体調やご希望、またプラークや狭窄の具合に応じて相談しながら、いずれの治療も安全に行えるよう脳外科医が治療方針の決定をお手伝いいたします。



経過

治療の有無にかかわらず、 定期的 な診察を受けましょう

 手術をせずに経過観察を行う場合は、狭窄度やプラークの状態によって数ヶ月〜1年間隔にMRIや超音波の検査を行い病変の進行有無を評価します。 この間、内科の先生と連携しながら、コレステロールや血糖、血圧などの管理を行っていきます。

 ステント留置術と内膜剥離術ともに、患者さんには手術前日に入院いただきます。 内頚動脈がかなり細くなっている患者さんは、術後に血流が多くなりすぎる過灌流という状態のリスクがあります。 これは頭痛や痙攣などを起こす場合もありますが、重篤なものになると脳出血を起こすため、リスクが高い患者さんは術後1〜2週間、血流の検査をしながら血圧の管理をするため入院を続けていただきます。 そのリスクが低い患者さんは術後数日〜1週間程度で退院となり、退院後はすぐに日常生活に戻ることが可能です。