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脳動脈瘤


疾患症状について

ほとんどが無症状、破裂すると激しい頭痛

 病院の診察室で、脳動脈瘤といわれて“ドキッ”としない人はいないと思います。

 それもそのはず!

 脳動脈瘤は、様々なメディアで命にかかわる病気として沢山取り上げられてるからです!!
 そんな脳動脈瘤ですが、ほとんどの場合は経過観察(定期的な頭の検査)で終わることがほとんどです。未知の恐怖におびえるよりも、正しい知識で不安を取り除きましょう!


脳動脈瘤とは

 脳の血管にできた壁の薄い瘤(コブ)のことです。脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血という脳卒中になってしまいます。破裂してしまった動脈瘤は緊急手術が必要なのですが、破裂していないものは全く症状がないことがほとんどです。


発見のタイミング

 破裂していないものを未破裂脳動脈瘤と呼びますが、これが脳ドックや何かしらの精査のためのMRIなどで偶然見つかることがあります。


破裂する可能性

 この未破裂脳動脈瘤の破裂率は多くの場合、年間0.5〜5%程度といわれています。 ただし、部位や大きさ、形態によって、破裂率は大きく異なります。 日本の医療機関では、UCAS JAPANという研究のデータをもとに患者さんへ破裂率をお伝えすることが多いです。

 しかし、脳動脈瘤の破裂は大きさや形状だけで決まるわけではなく、患者さんの行動や環境によっても変化します。 一般的には血圧が上昇した際に破裂すると言われているため、トイレでいきんだ時、器械を使用した筋力トレーニングを行っている時、急に寒い所へ出た時、朝方(血圧が高い)などに破裂して救急外来を受診する方が多いです。


どんな治療が必要か

 見つかった未破裂脳動脈瘤の部位や大きさ、形態に応じて、治療そのもののリスクと天秤にかけて、経過観察や手術での治療など方針を選択していきます。一部の癌などのように「手術をしないと悪化する」というような病気ではなく、手術をしなくとも一生破裂せずに過ごせる可能性も十分にあります。

 脳卒中の予防のための手術を受けるのか、治療をするならどのような手術が適しているのか、時間をかけて相談していくことが肝心だと考えています。一方、大型の動脈瘤が脳や神経を圧迫し、頭痛やものが二重に見えるなどの症状で発症することもあります。その場合には手術による治療が必要となります。



検査・診断

動脈瘤の形状や周囲の血管を正確にとらえる


 脳動脈瘤の検査にはどのようなものがあるかご存じでしょうか。

 痛いのかな? 時間は? 入院が必要なのかな? なんて疑問があると思います。

 そんな疑問にお答えします。


MRI検査(MRA)

 動脈瘤があるかどうかは、造影剤や放射線を使わないMRIを用いた血管検査であるMRAで判断がつくことがほとんどです。 外来で行え、針を使用しないので痛みはなく、検査時間は30~40分です。 そのため、何かしらの病気を疑って脳の検査をする場合や脳ドックなどでは、このMRAを撮像して脳動脈瘤がないかをチェックします。

 ただし、体内に金属がある方や入れ歯・補聴器・入れ墨などがある場合は、機器の破損、やけどなどの可能性があり、閉所恐怖症がある方は検査に耐えられない可能性があるため、スタッフへお申し付けください。 もちろん、当院スタッフからあらかじめ確認させていただきます。


CT検査(CTA)

 もしMRAで脳動脈瘤を疑う場合やMRIが撮れない患者さんの場合は、造影剤を使用したCT検査であるCTAで血管の撮影を行います。

 造影剤は腕の静脈に針を刺して投与するので、チクッとした痛みがあります。 また、造影剤を投与した際に体のほてりを感じる場合がありますが、多くは1分以内にほてりは解消されます。

 外来で行え、15~20分以内で終わります。ただし、腎臓が悪い方や喘息をお持ちの方はお体の状態が悪くなる可能性があるため、診察の際にお申し付けください。

もちろんスタッフより確認させていただくことがほとんどです


脳血管撮影(DSA)

 MRAやCTAで治療が必要な動脈瘤と判断された場合または精査をご希望される方を対象に、カテーテルを用いた脳血管撮影(血管造影検査:DSA)を行います。

 この検査は入院で行うことがほとんどです。 多くの場合は2泊3日、手から検査の場合は1泊2日です。 麻酔を行い動脈に針を刺しますが、最初の局所麻酔さえ終われば、痛みを感じない人がほとんどです。 造影剤使用時のほてりがあります。 その他に目がちかちかやめまい、苦みを感じる場合もあります。

 脳の血管には穿通枝(1mm以下)と呼ばれる細い血管が存在します。 現代のMRAやCTAでは穿通枝を描出することは困難ですが、DSAでは0.1mm程度の構造物を検出できる可能性があります。 もし動脈瘤から直接穿通枝が分岐している場合や動脈瘤の周囲から穿通枝が分岐している場合は、治療による合併症のリスクが高くなります。

 また、最近は体への負担が少ないカテーテル治療をご希望される方が多くなってきていますが、穿通枝の状態によっては開頭手術(後述)を行うほうが合併症が少なく治療できることがあります。

 当院では、予約や紹介状などがなくとも検査が必要な患者さんには、その日のうちにMRIやCTが可能な体制を整備していますので、お気軽にご相談下さい。

 ただし、予約している方を優先しますので、お待ちいただくことをご了承ください。検査時刻まで外出していただくことは可能です。



治療法

3 つの選択肢があります

 未破裂脳動脈瘤に対しては、1. 経過観察、2. カテーテル治療、3. 開頭手術の3つの選択肢があります。 見つかった動脈瘤の大きさや部位に応じてある程度の年間破裂率がわかるので、それに応じて経過観察をするのか手術をするのかを話し合います。 治療を行う場合は、カテーテル治療と開頭手術それぞれのメリット・デメリットがあるので、それを十分にお話した上で、治療方法を皆様やご家族とご相談していきます。


経過観察

 多くの方の脳動脈瘤は小さく形状も丸いため経過観察を行います。 まずは、血圧などの生活習慣を見直しましょう。 経過観察中に破裂する動脈瘤が“ない”とは言えませんが、破裂しないことのほうが圧倒的に多いです。 ただし、小さいから破裂しないというわけではないので、脳動脈瘤をお持ちの方はとても不安が残ると思います。 不安を取り除くためにも定期的な診察・検査は受けていただくことを強くお勧めします。 不安が強い場合には、小さくても外科治療を行うことがあります。


カテーテル治療

 カテーテル手術は開頭手術と比較して容易であることが多く、頭を開けなくて良いという大きなメリットがある一方で、再発する例が一定数あり、あるいは抗血小板薬の内服が必要な場合もあるという問題もあります。


開頭手術

 一方で、開頭術は頭を開ける必要があるのですが、当院で行う場合は脳・神経など正常構造は確実に温存するのは当然のこと、必要に応じて複雑なアプローチやバイパス(血管をつなぎ合わせる)などを駆使してでも動脈瘤を根治する技術を有しており、また整容面にも非常にこだわって手術を行っているため安心して治療を受けていただけます。


治療の相談について

 動脈瘤が見つかった年齢や部位に応じて、どちらの治療かを自信をもって提案します。さらにはこの2つを組み合わせた治療を提案できる脳外科医が治療方針の決定をお手伝いいたします。また、超高難度動脈瘤の場合、皆様に最高の治療を提供できるように、昭和大学脳神経外科主任教授の水谷徹先生や松田芳和先生と戦略を考えることもあります。

 脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を発症してしまった場合は、昼夜問わず直ちに緊急手術を行うことが可能です。破裂瘤は病院到着時にはすでにいったん破裂による出血が止まっていることがほとんどなのですが、再破裂して致命的となる場合や後遺症につながる可能性が高くなってしまうため、72時間以内に手術をすることが推奨されています。

 とは言うものの、いつ再破裂するかもわからない爆弾を頭の中に抱えている患者さんに、病院側の都合のよいタイミングまで待っていただくような診療体制では地域のみなさまに安心いただけないと考え、当院の脳卒中センターでは24時間365日いつであっても開頭手術・カテーテル治療ともに直ちにベストな治療が行えるようスタッフを配備しています。



経過

治療の有無にかかわらず、 定期的 な診察を受けましょう

 未破裂脳動脈瘤を経過観察する場合は、その想定される破裂リスクに応じて数ヶ月〜数年に一度、外来でMRAやCTAの検査をして破裂リスクが高まっていないかの評価をします。可能であれば、治療を受けられた方は長期間定期検査していただくことをおすすめしています。

 カテーテル手術を行う場合は、手術前日に入院して各検査を行い、ほとんどの患者さんは術後数日程度での退院が可能です。退院後はすぐに日常生活に戻ることができます。

 開頭手術を行う場合も同様に手術前日に入院、術後1週間程度で創部の経過観察の必要度が下がったところで退院となることがほとんどです。患者さんのご希望に合わせた術後数日で退院いただき、外来にて創部の経過を診察することも可能です。

 開頭術後の日常生活への復帰には個人差があり、一時的に頭痛やふらつきを感じられる場合もありますが、概ね術後2週間程度で元通りの生活が可能になります。