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喫煙はわが国を含む先進国において疾病や死亡の原因の中で防ぐことの出来る単一で最大のものであり、禁煙は今日最も確実にかつ短期的に大量の重篤な疾病
や死亡を劇的に減らすことのできる方法です。すなわち、禁煙推進は喫煙者・非喫煙者の健康の維持と莫大な保険財政の節約になり、社会全体の健康増進に寄与
する最大のものと言っても過言ではありません。
ところで、喫煙習慣の本質は『ニコチン依存症』であり、本人の意志の力だけで長期間の禁煙ができる喫煙者はごくわずかであることが明らかになっています。欧 米ではニコチン依存症を「再発しやすいが、繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患」と捉え、禁煙治療に対する保険給付などの制度を導入して、多く の喫煙者が禁煙治療を受けることができるよう社会環境の整備を進めています。2005年2月27日に発効したWHO「タバコ規制枠組条約(FCTC)」に おいても、「締約国は、タバコの使用の中止及びタバコへの依存の適切な治療を促進するため、自国の事情及び優先事項を考慮に入れて科学的証拠及び最良の実 例に基づく適当な、包括的及び総合的な指針を作成し及び普及させ、並びに効果的な措置をとること」(同条約第14条)が求められています。
タバコが体に悪いのはいまや常識となっています。ですからあなた自身の体を病気から守るために禁煙をすべきなのです。
図1 主な死因別に見た死亡率の年次推
図2 男女別死亡率の年次推移
図3.非喫煙者を1とした時の喫煙者の死亡の危険度
近年、『受動喫煙:Secondhand smoke』という言葉が一般的になってきています。
タバコは、吸う人の健康のみならず喫煙者の周囲の人の健康も脅かします。
タバコの煙には「主流煙」と「副流煙」があり
ます。喫煙者が吸う方は「主流煙」と呼ばれmタバコの先から出る煙のことを「副流煙」と呼んでいます(図4)。
図4.主流煙と副流煙
副流煙に含まれる毒性物質は主流煙のそれの何倍も有害であることがわかっており、これによる健康被害が問題視されています。
図5.有害物質:主流煙中の量を1とした時の副流煙中の量
受動喫煙による健康被害
- 受動喫煙によって冠動脈心疾患のリスクが25%~30%増加する
- 喫煙者との同居に伴う受動喫煙が原因で、肺癌リスクが20%~30%増加する
- 受動喫煙と乳幼児突然死症候群の間には関係がある
- 親の喫煙による受動喫煙と、幼児及び子供における下気道疾患の間には関係がある
- 親の喫煙と、中耳炎や慢性滲出性中耳炎などの小児の中耳疾患の間には関係がある
2007年に世界保健機構(WHO)は勧告書において受動喫煙が健康に害をなしているという根拠と、社会的コストならびに経済的コストの重大な増加を招いていることを示し、その解決策として「受動喫煙からの解放」を行う政策を提言しています 。
- 提言1 — 換気をするのではなく、100%禁煙の環境をつくる。
- 提言2 — 法律により包括的に規制する。
- 提言3 — 法律により実行性のある施策が適切に施行されるようにする。
- 提言4 — 家庭内においても受動喫煙を減少させるように社会教育する。
我が国の子供の大部分は妊娠中の胎児も含めて受動喫煙にさらされていると考えられています。
まず、能動喫煙そのものが不妊症のリスクを増加させ子宮外妊娠・胎盤早期剥離などの産科的救急疾患も喫煙者に明らかに多く、妊娠1か月までの喫煙が出生後の肥満、糖尿病発症などのリスクを大きく増加させることがわかっています。
喫煙が妊娠経過にもたらす悪影響 |
病気・障害 |
リスク増加度(倍) |
子宮外妊娠 |
2.5 |
前置胎盤 |
3 |
胎盤早期剥離 |
2.4 |
前期破水 |
2~3 |
流産 |
1.25 |
早産 |
1.5 |
死産 |
1.1~1.6 |
日本禁煙学会編:禁煙学(第2版)より引用
子供の受動喫煙病 |
病気・障害 |
リスク増加度(倍) |
乳幼児突然死症候群 |
2~5 |
小児白血病・リンパ腫・脳腫瘍 |
2~5 |
気管支炎・肺炎 |
1.5~2 |
中耳炎(急性・再発性・滲出性) |
1.5 |
学童の気管支喘息 |
1.5 |
学童の咳・痰・喘鳴・呼吸困難 |
1.5 |
幼児期の喘息様気管支炎 |
1.5 |
注意欠陥多動性障害(ADHD) |
2~5 |
学童期の肥満 |
2~3 |
成人期の糖尿病・心臓病 |
2~4 |
日本禁煙学会編:禁煙学(第2版)より引用
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